Screamin' Jay Hawkins

Screamin' Jay Hawkins

今回ご紹介する1曲はScreamin' Jay Hawkinsの「I Put A Spell On You」

Screamin' Jay Hawkins(1929-2000)
スクリーミン・ジェイ・ホーキンスは1950年代初期のR&Bフリークのカリスマと呼ばれるアーティストで、「I Put A Spell On You」は1956年にOkehレコードからリリースされた、彼の大ヒット曲です。

そしてこの曲は、1984年のアメリカ映画『ストレンジャー・ザン・パラダイス』で使用され、リバイバルヒットもしています。

 

「I Put A Spell On You」=「私はあなたに呪い(魔法)をかける」
と、タイトルが意味深で少し不気味なのですが、実は元々は単に去っていった恋人に「帰ってきて!」という願いを込めた歌だったそうです。
しかしながら、ステージパフォーマンスはかなり奇怪です。
花火やマグネシウムを焚いた稲妻や雷を演出し、棺桶で登場してドラキュラのように起き上がったり、
蛇や頭蓋骨などでステージを飾り、ヘンリーと名付けたドクロを持ちながら歌う、奇をてらったショーを演じました。
そしてTheatrical Rock(ロックショー)といえばアリス・クーパーだと言われていますが、実は元祖はスクリーミン・ジェイ・ホーキンスなのです。
このステージパフォーマンス、当時は物議をかもし出したそうですが、、、当然ですよね。(笑)

そして余談ですが、ロックン・ロールの名付け親といわれ、反骨の士としても有名なアラン・フリード。
彼はスクリーミン・ジェイ・ホーキンスの故郷クリーブランドでDJをしており、当時「I Put A Spell On You」を取り上げたところ、これが大当たり!
これがクリーブランドがロックンロールの故郷たる由縁です。

それから冒頭で触れた『ストレンジャー・ザン・パラダイス』は映画監督ジム・ジャームッシュの大傑作。
1984年カンヌ国際映画祭最優­秀新人監督賞を初め、数々の賞を受賞しています。
日本公開当時はミニシアター・ブームの草分け的作品としてロングランヒットしました。
物語はニューヨークでヤクザな暮らしをしている青年の部屋に、ハンガリーから従姉妹のヒロインがやってきて、さらに賭博仲間の青年の友人を交えた3人が繰り広げるロードムービー。全編を通してモノクロで撮影され、アクションともスペクタクルとも無縁なこの映画ですが、一瞬の暗転からカットインする画面の構図など、初めて見たときは格好いい映像に目を奪われました。
この映画の主人公と相方はいつもハットを被っています。そして被り方も格好いい。
が、しかし80年代のアメリカでは流行っていた訳ではないはずです。むしろ今の方が流行っているかもしれません。
また、ハット以外の服装もサスペンダーやタートルネック、上着やパンツのコーディネートなど、今見ても新鮮で、
30年以上昔の映画ですがファッションが色褪せていません。

公開当時1984年は、アメリカではロス5輪が開かれ、映画では『ターミネーター』や『ゴーストバスターズ』などがヒットし、音楽ではマドンナの「ライク・ア・バージン」、マイケル・ジャクソンの「スリラー」が大ヒットしていました。
上記のような華やかさと豪華さを謳歌するアメリカ文化の影で、ひっそりと咲く道端の花のように、疲れたアメリカの一面を見せたのが『ストレンジャー・ザン・パラダイス』だったのだと思います。
つまり、2人のアウトサイダーな雰囲気というか、独特のやさグレ感を漂わすファッションは意図的なものだったのでしょう。
ちなみに、独特のやさグレ感を見事に演じた主人公と相方の2人は、共に本職はミュージシャンです。
これには、ある意味納得出来ます。 
そして、私はこの映画で初めて「I Put A Spell On You」を聞きましたが、この映画を見ていなかったら、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの名前すら知らなかったかもしれません。
しかし、「I Put A Spell On You」は1960年代、70年代のミュージシャンでカバーしてない人はいない、というほどの名曲です。近年もジェフ・ベックとジョス・ストーンによりカバーされ、今また蘇っています。

1956年の怪人スクリーミン・ジェイ・ホーキンスの「I Put A Spell On You」は今でも世界中のミュージシャンに愛される名曲であることは間違いありません。

 

 
北川ちぐさ