HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

Singalong

2016,12,24
坂本龍一
「Merry Christmas Mr.Lawrence」

クリスマスの時期を迎えると、必ず流れてくるこの曲。

雪の降り始めを思わせるような静かなイントロから始まり、だんだんと雪が積もっていくような繊細なメロディ。この曲は、YMOのメンバーであった坂本龍一の初期を代表する作品「Merry Christmas Mr.Lawrence」。切なく美しい名曲です。

そもそもは映画「戦場のメリークリスマス」のために作られた楽曲。しかし、この曲は知っていても映画は観た事がない、と言う方の方がほぼかもしれません。なぜなら、1983年公開の映画でありながらDVD化されたのは2011年。僕自身もずっと観たいと思っていたのですが、VHSでの販売しかされていなかったため、観る機会を逃してしまっていました。

Yoriko Yoshidaさん(@yoriko_y_)が投稿した写真 - 2016 5月 29 3:53午後 PDT


この曲を語る上で絶対に欠かす事のできない映画。しかし単純な言葉では解説できない奥の深い作品なので、概要を少しだけ紹介させていただきます。
戦争映画でありながら戦争シーンが1つもなく、女性が1人もでてこないこの映画の特徴。戦争という極限の状況で、西洋と東洋の道徳や価値観の違いに悩みながらも惹かれていく、男同士の奇妙な友情(愛情?)が描かれた作品です。

@y_cinemaが投稿した写真 - 2016 6月 27 5:04午前 PDT

 

りぽさん(@ripo1004)が投稿した写真 - 2016 10月 30 2:45午前 PDT

 

監督は大島渚。出演はデヴィッド・ボウイ、坂本龍一、ビートたけし、ジョニー大倉(元CAROLのギタリスト)…と、豪華すぎる面々。

Oliver Jiaさん(@foxhounder1014)が投稿した写真 - 2016 2月 20 7:55午後 PST

 

この豪華なキャスティングには、

<< 一に素人、二に歌うたい、三、_四がなくて五に映画スター >>
大島渚 著 「大島渚1960 (人間の記録)」

という、大島渚監督独自のこだわりがあってこその配役なのです。そのこだわりが、プロには出せない妙なリアルさと、独特の緊迫感を生み出しているのだと思います。
そんなこだわりもあって、当時人気絶頂だったYMOが散開する少し前に、坂本龍一に出演交渉をしたそうです。すると坂本側から返答は、出演の交換条件として音楽も担当させてほしいとの返答でした。この事が、この名曲がつくられるきっかけとなったのです。
坂本龍一にとっても、初めての映画音楽となったこの楽曲。
200時間以上もスタジオにこもり、普通の日本映画の10倍以上という音楽予算とエネルギーを費やして作られました。
のちにこの曲は、日本の民謡や演歌などに取り入られている東洋的な音階を用いたメロディと、西洋古典音楽の基本的な進行が用いられている事から、世界中から東洋と西洋の融合という評価を受けました。

しかし、本人は著書において

「東でも西でもない、西洋人も東洋人も同様に感じる事ができる、あるオリエンタルな空想の場所で、古代であり、現代であり、つまり時間的にもどこでもありうる場所」

*引用元:「坂本龍一・全仕事」
このような場所を想定して作った事を窺い知れるような文章も残しています。

とはいえ映画音楽は初めての経験。下記のようにも語っています。

「映画音楽なんて一度も手がけた事がないのに、なぜかできそうな自身があった。若さゆえだったのでしょう。でもどうやって作ったらいいのかまったく分からず、撮影で親しくなったプロデューサーのジェレミー・トーマスに参考になる映画を聞くと、『市民ケーン』と言われました。そこで早速、映像と音楽との関係を徹底して分析したのです。僕が出した答えはシンプルで、映像の力が弱い所に音楽を入れればいいという事。曲を作ってからどの音楽をどの場面に入れるかのリストを作り、大島監督と突き合わせをしたらなんと99%一致していて、これですっかり自信がつきました。まったくの新人に大切な仕事を丸ごと任せてくれる、その懐の深さがありがたかったですね。」
*引用元:朝日新聞デジタル

大島渚監督の大胆な決断と坂本龍一の新たな挑戦が見事に調和して、この素晴らしい楽曲が作られたのです。

 

クリスマスソングなのですが、幸福感溢れる曲でもなければ色恋がテーマでもないのに、未だに聴かれ続けているこの曲。坂本龍一自身、なぜこの曲だけが特に好まれるのか、作った当時から分からなかったようです。しかし今となっては何と40曲以上のカバーバージョンがあるのです。

その中から一つ、映画には使用されませんでしたがこの映画のサウンドトラックの最後に収録された、隠れた名曲も合わせて紹介したいと思います。

「禁じられた色彩 Forbidden Colours
※ Colour=Color イギリス英語でのスペル。

 

デヴィッド・シルヴィアンというイギリスのミュージシャンが歌詞を書き、編曲したバージョンです。デヴィッド・シルヴィアンとは80年代に一世を風靡した”JAPAN”というバンドの元ボーカル。元祖ヴィジュアル系ともいわれる彼ですが、バンド名からもわかるように日本文化にかなりの影響を受けたアーティストでもあります。

 

Robloveseightiesさん(@robloveseighties)が投稿した写真 - 2016 12月 6 4:57午後 PST

 

Callum Barks-Mooresさん(@electronicsynthesizer)が投稿した写真 - 2016 11月 27 12:05午後 PST

 

そしてその影響は歌詞にも表れています。三島由紀夫の男色小説、禁色(英題:Forbidden Colorsからインスピレーションを受けて書かれたそうで、映画の世界観を見事に表現しています。

Here am i, a lifetime away from you
僕はここにいるのに、あなたとの間には越えられない隔たりがある

The blood of christ. or the beat of my heart
信じるべきか、心の衝動に身を委ねるべきか

My love wears forbidden colours
僕の愛は禁じられた色彩を帯びている

My life believes (in you once again)
僕はもう一度、あなたを信じて生きる

 

多くの偉人達が携わり、膨大なエネルギーを注いで作られたこの映画。もし、まだ観た事がないという方がいたら是非観る事をおすすめします。
映画のラストシーン、ビートたけしの有名なセリフのあとに、エンドロールと共に静かに流れはじめる曲。とても美しく切ない曲ですが、映画を観終えたあとだと、また違う聴こえ方がしてくるかもしれません。

 

「メリークリスマス、ミスターローレンス」

 

タキザワ トモヒロさん(@taki_o8)が投稿した写真 - 2016 7月 23 4:14午後 PDT

 

 written by Double 松井正太