HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

Singalong

2016,12,17
宇多田ヒカル
「真夏の通り雨」

『人間活動に専念する』と宣言し、2011年からアーティスト活動を休止していた宇多田ヒカル。
そんな彼女が今年、ついに日本の音楽シーンに舞い戻ってきました。

*当人曰く「引退宣言」でもなければ「休養」でも「充電期間」でも無いとしていた

 


それに合わせて発売した自身6作目のアルバム「Fantôme」は、特典をつけないとCDが売れないと言われるこの時代に一切特典をつけずに発売。それでもオリコンでは4週連続1位を獲得し、自身のこれまでの記録も更新しました。
さらに全米チャート上位にランクインするなどこれまで以上の快挙を成し遂げ、本人や関係者たちは驚いたそうです。

 

日本国内においてミリオンヒットが続出した90年代の終わりに、彗星の如く現れた当時15歳の宇多田ヒカル。
「Automatic/time will tell」「Movin’on without you」の2枚のシングルを立て続けにヒットさせ、そのままの勢いでデビューから3ヶ月後には1stアルバム「First Love」を世に放ちます。

デビューしたてのアーティストのアルバムが初動で200万枚以上売れたこと自体が驚異的ではありましたが、彼女の本当にすごいところは、90年代のインターネット黎明期にあったあの時代、SNSも何もなかった時代に、驚異的な伝播力を持って一気に日本国中に浸透したところにあります。

一瞬にして「別格」の存在になったのです。

特別なプロモーションをしたわけでもなく、今流行りのキワモノビジネスの延長で売り出したわけでもない。
それなのにこの伝播力。

それもそのはず、彼女の発表した曲は、全て作詞作曲編曲はもちろんプログラミングさえも彼女自身が今現在も行っており、曲のあらゆる面において彼女の思いが反映されているからなのです。

 

今回ご紹介する「真夏の通り雨」はアルバム『Fantôme』より先行してシングル「花束を君に」と同時に発売されました。

『人間活動に専念する』と宣言してから、ほぼ歌っていなかったというブランクを全く感じさせないどころか、むしろ以前の宇多田ヒカルよりもさらに進化しているように感じる歌です。

そして、「真夏の通り雨」と「花束を君に」は2013年8月に他界した母親の藤圭子さんへの想いを歌っているようです。
“美しい日本語と思える歌を作りたいと思った”と話している通り、タイトルから歌詞まで全て日本語。辛い別れを高い表現力でより神秘的に、一言一言を噛みしめるように歌われているこの曲は人の心に迫るものがあります。

若さを感じる儚くて切ない昔の声も好きですが、切なさの中にも包み込むような優しさがある今の歌声は、現在母親になった彼女だからこそ歌える唄なのかなとも思います。

ヤバイネーションさん(@yabaination)が投稿した写真 - 2016 11月 13 3:33午後 PST

 

彼女は母親をアーティストとしても心から尊敬していたそうです。
ツイッターでも、“4週連続1位になっちゃった。びっくり。しかし藤圭子の37週連続1位には遠く及ばぬわ笑”とコメントが。


藤圭子のファーストアルバム「新宿の女」は当時20週連続1位を記録。それだけでも凄いのですが、さらにその記録を止めたのが、自身のセカンドアルバム「女のブルース」だったのだそうです!同作は17週連続1位となり、合計37週連続1位という大記録を打ち立てたという・・・とんでもない記録なのです。
藤圭子の魅力は、可愛らしい見た目とは裏腹に、ドスのきいたハスキーボイスでディープな歌詞を深々と歌うというギャップ。タイプは違う2人ですが、彼女の歌唱力、表現力は紛れもなく母親の藤圭子譲り。色々と考えながら「真夏の通り雨」を聴くと、母親にまだまだ話したいこと、聞きたいことが沢山あったんだろうなと察する事ができます。

『Fantome』とは、「幻」や、「気配」を意味するフランス語。輪廻(りんね)という視点からこの言葉がタイトルに選ばれており、そこに合わせてジャケットの写真のピントはあまめにしているのだそう。アートワークも宇多田ヒカルの細部に渡りこだわりを感じます。

是非、このCDは買ってお家で歌詞カードを見ながらゆっくり聴くのをオススメします☆

 

Pepaomalaw Ganapatiさん(@pepaomalaw_ganapati)が投稿した写真 - 2016 11月 26 10:03午後 PST