HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

Singalong

2016,11,12
Daniel Johnston
「True Love Will Find You In The End」

 

 

ダニエル・ジョンストン。
あまり聞き慣れない名前かもしれませんが、彼が描いたこのイラストなら見たことがある方も多いかもしれません。
過去にカート・コバーンがこのイラストが描かれたTシャツを着回し話題になったり、最近では日本を代表するブランド、SacaiのコレクションやSupremeのTシャツにも彼のイラストが使用されたりと、何かと注目を集める存在です。

 

@argentgleam.officialが投稿した写真 - 2016 10月 8 2:02午前 PDT

 

「テキサスのブライアン・ウィルソン」「売れてないジョン・レノン」とも呼ばれる彼は、天才的な才能の持ち主であり、双極性障害という病を持つアーティストでもあります。
トム・ウェイツ、デヴィッド・ボウイ、カート・コバーン、ベック…名立たるアーティストからも愛され、尊敬される彼は一体どんな人物なのでしょうか。

1961年、カリフォルニア州サクラメントで生まれ育ったダニエル・ジョンストン。
父は軽飛行機のパイロットで、母はキリスト教原理主義者でした。
5人兄弟の末っ子として育った彼は、小さな頃からコミックブックと音楽が大好きで、ビートルズ、なかでもジョン・レノンの曲を好んで聴いていたそうです。
小学校の頃は常に成績はトップで、特に音楽と絵に関しては誰からも嫉妬されるくらいの才能の持ち主。

 

 

しかし、母親には彼の趣味をまったく理解されないばかりか「そんな悪魔のような漫画を読んで音楽を聴いてると地獄に行くわよ。」と怒られる毎日。

彼は母親の説教をこっそり録音し、この怒りっぽい母親をモチーフにした映画を兄と一緒に製作したり・・・ユーモアを持って己の才能を発揮しますが、大好きな音楽とコミックを悪と決めつけ、やる事全てを否定される事により、彼の心は傷つき、地下室に引き籠もるようになっていきます。

 

 

時は経ち、なんとか高校を卒業したあとに、彼は無理矢理クリスチャンの大学に入学させられます。しかし、そのため少しずつ精神は病んでいき、双極性障害となっていくのです。
双極性障害が発症したのち、好きな事をさせればその症状も治まるのではという発想で今度は地元のアートスクールに転入します。

そして、そのアートスクールで運命の人、ローリーと出会うのです。

ローリーとは、こののちにアートスクールを中退してからもずっと彼の音楽活動の永遠のミューズとなる人物。ダニエル・ジョンストンは、なんと20年以上も彼女に片思いをしているのです。

*ローリーは他の男性と結婚しています

彼ほど”純粋”という言葉が似合うアーティストです。なぜなら、彼の心は12歳のままで止まってしまっているから。今回は、そんな彼がローリーを思って歌った名曲を紹介したいと思います。

"True Love Will Find You In The End"

 

 

「いつかほんとうの愛に出会える」という優しく前向きな歌ですが、20年間叶う事のない片思いをし続けているという事を知った上で聴くと、なんだかとても切ない気持ちになってしまいます。

2分にも満たない短い曲ですが、彼の純粋さを見事に表現しているこの曲は、様々なアーティストから愛され、カバーされています。
聴いてもらうとわかると思いますが、歌唱力・演奏・録音状態…どれをとっても、お世辞にもうまいとは言えません…それでもこんなにも惹き付けられてしまうのは、歌声・音楽性・そしてなにより彼自身の存在に純粋な思いを感じるからなのだと思います。

有名になりたいとか、CDを売らなきゃいけないとか、かっこよく見られたいとか…そんな欲を感じさせず、子供心に似た純粋さで、ただ人に聴いてもらうために”歌っている姿に、胸を打たれます。

 

 

人生は、大人になるとつい余計な事を考えてしまいがちです。だからこそ少年の心を持つ「おじさんの純粋さ」に、なおさら惹き付けられるのでしょう。

ダニエル・ジョンストンが起こした、純粋であるがゆえに普通では起こりえない逸話を紹介したいと思います。

「父の操縦する飛行機に乗せられたダニエルは自分がキャスパーになった気になった。飛行機のイグニッション・キーを引き抜いて窓から捨ててしまった。飛行機は墜落した。飛行機が落ちた所には運良く大きな木があったので、二人は奇跡的に死なずにすんだ。ダニエルはすごい冒険をした気になって得意満面だった。」

「マウンテン・デューの味にとりつかれ、マウンテン・デューを賛美する歌を作ってペプシに送ったがCMソングに採用してくれなかった。」

「ビートルズの楽曲であるレボリューションNo9の”ナンバー9、ナンバー9、ナンバー9”というリフレインにとりつかれ、”7は神で、6は悪魔、僕は9だ”と思い込み、家族のクリスマスツリーに”9”の札の飾りをつけ、それをヘンだと言った家族に襲いかかった。」

「自宅の地下室で宅録を開始するも”ダビング”を知らなかったため、注文の数だけ演奏し、1本1本録音を繰り返した。」

「NYでライブを行った際、自由の女神に落書きをした罪で逮捕。」

「2004年に発売したトリビュートアルバムのジャケット。ダニエルの墓の前で花を手に、悲しそうに佇むおじさんが写っているが実はこれ、ダニエル本人。」

 

メチャクチャだけど、とっても愛らしいんです。

 written by Double 松井正太