HEARTS/Double Bside

HEARTS
Double

Singalong

2016,05,21
Primal Scream
「Loaded」

Primal Scream「Loaded」

1982年、スコットランドのグラスゴーにて、ボビー・ギレスピーを中心に結成されたprimal scream。

今では唯一のオリジナルメンバーとなってしまったボビー・ギレスピーですが、デビュー当初はThe Jesus & The Mery Chainというバンドを並行で活動しており、ドラム(本当は叩けない)を担当していました。

そして、The Jesus & The Mery Chainが傑作「Psychocandy」を出した絶頂期に正式なメンバーとして誘いを受けますが、彼はこれを拒否し、Primal Screamは本格的に活動を開始します。

バンドの特徴は変化し続ける音楽性と、ジャンルを超えたコラボレーション。

1st album 「Sonic Flower Groove」(1987)はネオアコ/ギターポップ作品だったのに対し、2nd album「Primal Scream」(1989)は、骨太なガレージロック。しかしどちらの作品も、流行の波に乗る事はなく、リアルタイムで評価される事はありませんでした。

当時のイギリスはアシッドハウス全盛。セカンド・サマー・オブ・ラブ(60年代後半のヒッピームーブメントの再来)を迎えたこの時期に、ハードロック風ファッションに身を包み、長髪をふり乱すインディ・バンドには、誰も興味をしめしませんでした。

 (※アシッドハウスとは、シンセサイザーの変調効果を多用したエレクトロミュージック。アシッド=LSDの俗称であり、幻覚作用を思わせる幻想的なサウンドが特徴。)

そこで、ロックンロールとアシッドハウスの融合を試みた3rd Album「Screamadelica」(1991)を発表。

The Rolling Stonesを手がけたジミー・ミラー、現在のテクノシーンに多大な影響を残したアンドリュー・ウェザオール等をプロデューサーに迎えて完成したこのアルバムは、「アシッド・ハウス・ムーブメントを代表するロック・アルバム」として、リリースと同時に賞賛され、1992年、英国レコード産業協会により設立されたマーキュリー賞初受賞作品に。Primal Screamは飛躍的に評価を高めます。

今回は、このアルバムに収録されている「Loaded」を紹介したいと思います。

「We wanna be free to do what we wanna do. And we wanna get loaded and we wanna have a good time」

(ただ自由に、やりたいことをしたいだけ。気持ち良くなって楽しみたいんだ。)

という、映画 「The Wild Angels」のセリフのサンプリングから始まり、女性コーラスを取り入れた7分近くある長めの曲。

実はこの曲、前出の2nd Album「Primal Scream」に収録されている「I’m Losing More Than I’ll Ever Have」をベースに、アンドリュー・ウェザオールによりリミックスされた曲。

※のちにテリー・ファーリー、アンドリュー・ウェザオールはJunior Boy's Ownというレーベルを立ち上げ、Chemical Brothers、Under Worldを輩出しています。

Primal Screamさん(@primalscreamofficial)が投稿した写真 - 2016 1月 13 12:18午後 PST

 

今でこそ楽曲のリミックスなどは一般的ですが、当時としては斬新な出来事でした。

ロックとクラブミュージックを融合し、時代を変えたアルバムとして今なお高い評価を受けています。

ちなみにこの「Loaded」は、”キマりまくり”という意味もあるそうで、ボビー・ギレスピーとドラッグは、その音楽性を語る上で切っても切れない関係にあるようです。

その後も、Stone Rosesのマニ、My Bloody Valentineのケヴィン・シールズ、New Orderのバーナード・サムナー、Chemical Brothers、最近ではSky Ferreira、Haimと、ジャンルの枠を超えた幅広いコラボレーションを重ね、時代の流行と共に多様な音楽性を取り込み、変化を続けています。 

その背景には、彼らが困難な時期にはいつでも手を差し伸べ、元の軌道に戻る時にはそっと背中を押してあげるという、ボビーの情の深さと人徳があるからこそなのでしょう。

そんなPrimal Scream、アルバムごとに劇的に変化する音楽性から「流行に敏感なカメレオンバンド」と皮肉を交えた例え方をされる事も。

しかし、流行をいち早く読み、自分の色に変えて表現していく事。そんな感覚って非常に大事なんじゃないかと思います。

 

「We wanna be free to do what we wanna do. 」

 

written by Double 松井正太